最高裁判所第一小法廷 昭和42年(オ)1195号 判決 1969年2月20日
上告人
落合禎子
代理人
関口緝
被上告人
落合鶴之亮
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人関口緝の上告理由第一点および第四点について。
およそ、民法七六〇条の規定による婚姻費用の分担額および同法八七八条、八七九条の規定による扶養義務者各人の扶養料分担額について、関係当事者間に協議が調わないときは、家事審判法の定めるところに従い、家庭裁判所が審判によつて定めるべきものであり、通常裁判所が判決手続で判定すべきものでないことは、当裁判所の判例とするところである(最高裁昭和四一年(オ)第七八三号同四二年二月一七日第二小法廷判決民集二一巻一号一三三頁、同四三年(オ)第四五八号同年九月二〇日第二小法廷判決民集二二巻九号登載予定参照)。また、家事審判事件が訴訟事件として裁判所に提起された場合には、特別の規定のない限り、民訴法三〇条一項の規定により、これを他の管轄裁判所に移送することが許されないことも当裁判所の判例とするところである(最高裁昭和三五年(オ)第二九四号同三八年一一月一五日第二小法廷判決民集一七巻一一号一三六四頁参照)。そして、当該訴訟事件が家事審判法九条一項乙類所定の婚姻費用の分担および扶養に関する審判事項を内容とする場合であつても、これと別異に解すべきものではない。したがつて、右と同旨の見解の下に、上告人の本件婚姻費用の分担ないし扶養料の反訴請求を不適法として却下した原審の判断は正当であり、所論引用の最高裁決定に反するものでもない。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。
同第二点および第三点について。
所論指摘の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らして首肯することができ、右認定判断の過程に所論の違法は存しない。論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨、事実の認定を非難するか、原審の認定にそわない事実を前提とし、または独自の見解に基づき原判決を攻撃するものであつて、採用することができない。なお、所論引用の最高裁判例は、本件と事案を異にし、本件に適切でない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(岩田誠 入江俊郎 長部謹吾 松田二郎 大隅健一郎)